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ビールに関わる人に語ってもらう企画『Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen』Part3




新しい試みとして、おいしいビールを提供しているビールのオーナー・スタッフの方に記事を書いてもらおうという企画をはじめています。

記事を書いてくれているのは、私の友人がオーナーをしているY.Y.G. Brewery & Beer Kitchenのスタッフの山之内さん。

【過去記事】
ビールに関わる人に語ってもらう企画『Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen』Part1

ビールに関わる人に語ってもらう企画『Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen』Part2

今回は第3回です。

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こんにちは!Y.Y.G. Brewery & Beer Kichenの山之内です。第3回目のお話は「醸造について」です!今回はちょっとマニアックな話ですが、ビール造りに興味のある方はもちろん読んで頂きたいですし、そうでない方もこれをきっかけに醸造に興味を持っていただければと思います。

 

まず、お酒の中でのビールの立ち位置について簡単に。ビールはワインや日本酒と同じように醸造酒に分類されます。醸造酒は穀物などから抽出した糖分を酵母(イースト)によってアルコール等に分解させて出来るお酒です。一方、酒を蒸留して更にアルコール分を高めたのが、ウイスキーや焼酎などの蒸留酒です。

ビールの原材料は大きく分けて4つ。麦芽、ホップ、水、酵母の4つです。(これに副原料を追加したものは日本の酒税法上は発泡酒に分類されます。)

醸造酒の中でもビールは色々な材料を組み合わせて作る、少し複雑なお酒と言えそうです。

 

では、早速ビール造りの工程をY.Y.G. Breweryでの醸造の様子とともにご紹介いたします。

(工場の写真)

《1:麦芽粉砕》

麦芽とは発芽した麦の根を切り落として乾燥させたものです。後の工程で酵母が利用する為の栄養(タンパク質、でんぷん)がたっぷりと含まれております。一口に麦芽と言っても、種類は豊富で、造りたいビールのスタイルや微妙な味の違いによって、色々な麦芽を組み合わせます。その麦芽から栄養分を効率よく抽出する為に、粉砕を行います。

(麦芽粉砕の様子)

 

写真はアンバーエール(琥珀色のビール)をつくる為の麦芽で、5種類の麦芽を配合しております。香ばしさと琥珀色を出すためにカラメル麦芽を配合しています。Y.Y.G.の1回の仕込(300リットル)に使用する麦芽の総量は60~70kg。重く、粉も舞って、結構大変な作業です。

 

《2:マッシング》

次にマッシングです。これは最終的なビールの品質に大きく影響を及ぼす一番重要と言える工程です。簡単に言うと、粉砕した麦芽を1時間ほどお湯につけて、酵素の働きによって麦芽に含まれるでんぷんとタンパク質を、イーストが使えるような細かい糖分とアミノ酸に分解する工程です。単純なようで結構奥が深く、レシピ作りに置いて一番悩む工程です。

マッシングの様子)

 

活性させる酵素はプロテアーゼ(タンパク質をアミノ酸に分解する)、αアミラーゼ・βアミラーゼ(でんぷんを糖分に分解する)の3種類。これらはもともと麦芽に含まれています(深煎りの麦芽の酵素は死んでいます)。それぞれの酵素が最も良く働く温度帯は違い、造りたいビールによって温度をコントロールする必要があります

タンパク質はビールの濁りの原因になるので、クリアなビールを造りたい場合は、まずプロテアーゼが活性する50℃前後の温度帯に麦汁の温度を調整して、タンパク質をアミノ酸に分解します。これはプロテインレストと呼ばれます。

αアミラーゼとβアミラーゼの違いは連鎖した糖(グルコース)の分子を切り分ける箇所の違いです。αアミラーゼはザクザクとランダムに、βアミラーゼは鎖の端から少しずつ細かく切っていきます。そして前者は高めの温度(65~75℃)で、後者は低めの温度(57~66℃)で活性します。例えば、フルボディ(甘め、重め)のビールを造りたい場合は高めの温度でマッシングし、イーストが分解出来ない大きい糖分を残す。ドライにしたい場合はその逆、という様に微妙に温度を調整・変更します。また糖分はイーストによってアルコールに分解される為、最終的に作りたいビールのアルコール度数によって、分解する糖分量、残す糖分量も考えなければなりません。1℃違うとビールの出来は大きく変わります!




 

《3:煮沸》

マッシングを終えた栄養分たっぷりの麦汁は、今度は煮沸タンクに移されます。苦味付け用のホップと共に1時間以上煮沸して苦味を付けると同時にビールに不要な香りや味を揮発させます。またホットブレイクと呼ばれるタンパク質の凝固も煮沸中に起きてビールがよりクリアになります。最後に煮沸の終了間際から終了後にフレーバー・アロマ用のホップを投入して香りを調整します。ホップを入れた瞬間は工場内にとてもいい香りが広がります!

(ホップ)

(ホップを入れる写真)

 

《4:急冷》

煮沸が終わった麦汁にイーストを入れて発酵させるのですが、麦汁が熱いままだとイーストが死んでしまう為、イーストが働ける20℃前後(エールビールの場合)まで急冷します。ゆっくり冷えるのを待っていると細菌汚染のリスクがあったり、香りが飛んでしまう為、急冷します。また急冷すると、不要なタンパク質等の成分が凝固し沈みます。これはコールドブレイクと呼ばれます。Y.Y.G.ではプレートチラーという熱交換器を使用して100℃から一瞬で20℃まで一気に冷やします。

(プレートチラー)

この装置の中ある何層ものプレートの間を水と麦汁が行き来し、熱い麦汁が急冷され、水が熱いお湯に変わります。驚きのスピードです!

 

《5:発酵・熟成》

20℃あたりに冷えた麦汁に酸素を含ませたあと、今度はイーストを添加します。エールビールの場合、イーストは1週間ほど呼吸期・発酵期を経て、増殖しながら糖分を二酸化炭素とアルコールに分解し、同時に香りに繋がる色々な成分の生産・分解を行います。発酵の温度、タンクの形状、イーストにかかるストレスによって発生する香りが変わってきます。イーストについては解明されていないことが沢山あるそうですが、目に見えない世界での活動はとても不思議です!

(発酵タンク)

発酵が終わるとイーストは次第に沈殿して、ビールの透明度は増していきます。ここまで来るとビールらしい姿になります。また、熟成が進むと苦味がまろやかになったり、嫌な香りが消えたりして、やっと美味しいビールの出来上がりです。Y.Y.G.では発酵・熟成タンク中である程度熟成が進んだところで樽詰めし、冷蔵庫の中で二次熟成を行い、美味しくなったところで「開栓」しております。

(冷蔵庫の写真)

飲めるようになるまで仕込から約1ヶ月!リリース後も熟成が進んで味はゆっくりと変わり続けます。

(ビールの写真)

 

《まとめ》

最後まで読んで頂きました方、お疲れ様でした。普段見慣れない言葉が出てきて、読むのが大変だったのではないでしょうか。

ビール造りはシンプルだけに結構奥が深いということが伝わったかなと思います。原材料の配合、温度調整、pH調整、水の硬度調整、発酵温度管理、衛生管理などなど・・・・、ビールの出来栄えに関わる変数は多く存在します。ビールに限らず物作りは奥が深いですが、普段意識しないビール造りの奥深さを感じて頂ければ、ビールを飲むのがもっともっと楽しくなると思います!

 

Y.Y.G. Brewery & Beer Kitchen

Brewing Manager

山之内圭太




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